Album「ark」(1999)

1999年7月に2枚同時に発売されたアルバム「ray」がラルクの幻想的な世界観にどっぷりと浸かっている作品だとすると、「ark」は「世間受けの良いシングル曲」と「少々クセの強い楽曲」が並ぶ高低差が激しめのアルバムとなっている。個人的には、「ark」に収録されているシングル曲は全て大好きな曲なので、そんなシングル曲の中から、抜粋して三曲ほど紹介していく。

Pickup.1「Driver’s high」(1999)

ラルクを全く知らない人でも聴いた事があるであろうアニメ「GTO」のオープニングテーマ。「スピード狂」をテーマとした本曲を流しながら首都高を快走しようとすると、本当にスピード違反で検挙されるので、理性のぶっ飛びには注意してほしい。「GTO」は令和の時代だと、コンプラ的に絶対にアウト。でもこの殺伐とした時代・なんでもアリの時代には相応しい自由かつ現実を忘れさせてくれるロックナンバーである。

実はこの曲には、「戦争」「特攻隊」という重苦しいテーマがある。
その証拠に途中で
「目の前にはミサイルの雨」
「鋼の翼」
「爆発して灰になっても」
「来世でまた会おう」という歌詞が出てくる。
これは間もなく命を失う特攻隊員が搭乗している航空機を指す。
特攻隊員は搭乗の直前に覚⚫︎剤チョコを食べて恐怖を紛らわせていたという史実を聞いた事がある。

Pickup.2「Heaven’s Drive」(1999)

99年のグランドクロスライブでの急かしがちなテンポが丁度良い。
「壊れそうなスピード上げて連れ去ってくれ」という歌詞。何事も閉鎖的になりがちな自分の現状から、ノアの方舟に乗せて別世界へ連れ去ってほしい・・・というリスナーの共感を掴んだ。別にはっきりと別世界へ連れて行ってほしいわけではない。ただ、このままレールに乗った人生を歩むことに対して、退屈さを感じている自分がいるというのもまた事実である。「何者」かになれると思っていた自分だが、結局他人と同じ没個性的な人生を歩んでしまっている。せめて気持ちだけでも、反骨精神も込めて「アブナイ道」へと誘ってほしい。

Pickup.3「Pieces」(1999)

バラード調で神秘的な楽曲で、ライブの終盤に演奏されることも多い。
PVに込められたストーリーのテーマは「手にすると人を殺めてしまう呪いがかかったナイフ」である。
呪いのナイフは多くの人の手に渡り、100年に渡り世界各地で多くの人を傷つけてきた歴史がある。
「1899年 シチリア」「1972年 シカゴ」など様々な年代の各都市で、このナイフは人を殺めてきた。
そして…最後のサビ転調後のオチ。「1999年 ニューヨーク」で最後にナイフを手にしたのは…………….。