痛みを表現するバンド「Dir en grey」
世界ロックシーンで日本代表格として最前線で活躍し続けるDir en grey。もはやヴィジュアル系の枠組みを超えて「DIR EN GREY」としての音楽を表現している唯一無二の存在である。痛みや苦しみなど複雑な現代社会で生きていく上で必ず立ち塞がる人間の負の感情を、無責任に励ますことも、正当化するわけでもなく、表現を経て共感をさせてくれるバンドである。やはりボーカル「京」の圧倒的な存在感。京が表現するのは音楽だけでなく、ファッションやヴィジュアルでもあり、生き方であり、まさに京の心の中にある感情をキャンバスに描くように現実世界へ投影する。
そんなDir en greyもデビュー当初はヴィジュアル系としてデビューした。インディーズで武道館を埋める鳴物入りで日本の音楽界へ殴り込んできた彼ら。ヴィジュアル系が衰退する21世紀になっても、属性に囚われず、己の音楽観を貫き通し、世界へ活躍する大バンドへ変貌を遂げた。
「GAUSE」(1999年)
時代の影響もありDir en greyのアルバムで最も高いセールスを記録した作品。「ミュージックステーション」で放送事故を引き起こした伝説の楽曲「残」や「加害者の僕から被害者の君へ」という衝撃イントロから入る「蜜と唾」などが収録されている。比較的聴きやすい有名曲や世の深淵を覗いたかのようなアルバム曲が収録されている。
おすすめ曲1「304号室、白死の桜」
304号室といえば怨み数を含んだ妙に不気味で嫌な香りが漂うタイトル。主人公はおそらく精神的に障害がある人間で、まもなく死にゆく存在であることが歌詞からわかる。死に行く直前に大事な人のことを想い、桜の木の下で眠りにつくといったストーリー性がある。Aメロのギターがエレキによる攻撃的なサウンドなんだけど、どこか和っぽいメロディが、壊れた琴みたいな感じで自分のフェチにブッ刺さる。
おすすめ曲2「Cage」
Dir en greyの中ではポップな方だけど、カラオケで歌うと正直ドン引きされる曲。初期Dir en greyを象徴する楽曲では間違いない。PVは過激かつ暴力的なシーンが多数あるので視聴には注意してください。2024年度版に新たにリメイクされ、最新版は京のボーカルと演奏隊に25年分の深みが増した感じがする。ところどころ歌詞が変わっているのが、京のこだわりなのだろうか。。
おすすめ曲3「アクロの丘」
枯れる花 あの頃のように
もう一度だけいい 綺麗に咲きたくて
アコースティックのイントロから入る長尺のバラード。個人的にDir en greyの曲で五本の指に入る。「アクロ」とはギリシャ語で「高所」という意味であり、「もう戻ることのできない最果ての丘」をイメージさせるのがまず素晴らしい。PVも退廃的な世界観で、もう先がない、未来がない、過去には戻れない、そんなどこか切なく魂が昇華されていく様子を描いている。アクロの丘には、儚く散っていった者たちの墓場があるんだろうなと思う。