究極のヴィジュアル系バンド「MALICE MIZER」
GACKTが25年前に在籍していたバンドである。1990年代後半、La’cryma Christi・SHAZNA・FANATIC◇CRISISと共にヴィジュアル系四天王と呼ばれていた。
西洋風のゴージャスな衣装から「色物バンド」と認識されがちであるが、実際はファッションや楽曲への拘りに対して、全てが高い独自性とクオリティを併せ持つ本格派のバンドである。
由来はフランス語で”悪意と悲劇”である。言葉を発しないゴスロリの祖・manaを中心に結成された。中世ヨーロッパ貴族をモデルとした振る舞いから、ヴィジュアル系の中でも圧倒的な存在感を発揮していた。特に「manaの当時としては新鮮であったゴスロリファッション」と「美しいハスキーボイスのGackt」がヴォーカルを務めていた第二期がやはり至高である。
Album「merveilles」(1998)
全盛期の1997〜1998年頃の楽曲が結集された傑作。西洋をテーマとしたストーリー性が感じられる楽曲の並びは、短い世紀末に咲いた華だったバンドの集大成と言える。発売翌年にバンドが辿る悲劇的な結末を知ると、本作から盛者必衰の儚さを感じる。
PickUp.1「ヴェル・エール〜空白の瞬間の中で〜」 (1997)
代表曲「月下の幻想曲」と並ぶ有名曲。ギターのmana様(青色の人形みたいな人)とkozi(赤色のピエロみたいな人)のツインギター、yu~ki(黄色の伯爵みたいな人)の寡黙だが目立つベースライン、そして…ドラム・Kamiの変則的なパターンが特徴的である。特にドラムは、曲の中での手数が多すぎて叩くのが難しい。優雅さが売りのバンドの割に、ドラム・Kamiさんの激しめなパフォーマンス、とバンド内で最も親近感を感じやすい性格が好みである。
PickUp.2「au revoir」(1997)
フランス語で”別れの挨拶”を意味する。間奏の生ヴァイオリンがMALICE MIZERが目指す世界観への拘り にはあって、当初の予定では、よりハードな楽曲の仕上がりになっていたそう。しかし、叙情的で切ない歌詞であることを考慮して、締切二日前にハード路線ではなく、クラシカルで優しく語りかけるような繊細さを重視したアレンジへ舵を切ったと言う逸話がある。
PickUp.3「ILLUMINATI」(1998)
サイコチックな狂気とエロの欲望をイメージさせる楽曲。Kamiが「頽廃的で無機質な音」と自身のドラムを評しているが、疾走感が溢れるシンセサイザーとの親和性の高い音が印象的である。高貴で上品なイメージのMALICE MIZERが、非道徳的でサイコホラー的な楽曲を制作しているのが面白い。着飾った気品の内側に秘める狂気は人間の本質であり、決して隠し通せるものではない。