Radioheadのこれまで

1997年に発売された「OK Computer」が世界のロックシーンに衝撃を与える作品となった。一部のロックバンドからは「本当はRADIOHEADみたいな音楽をやりたかった」と言わせるほどの名声を得るほど成功した。Weird(不気味さ)を表現する音楽で時代の寵児となったRadiohead。そして来たる2000年…彼らは衝撃の新作をつくりあげた。

Album「Kid A」(2000)

先述の衝撃は「爆発的に売れた前作とは異なる実験的なアプローチで攻めてきたこと」である。弦楽器と打楽器の音の可能性を重視した「OK Computer」から、電子音楽の色を強めてきたことが「Kid A」の個性であり、全Radioheadのアルバムの中でエレクトロニクスの傾向が最も強いと感じる。科学館の場内音楽に近い無機質さを、かき消さないようにチューニングされたバンドサウンドが全く違和感を感じないのでしっくり聴ける。

実は最近PlayStation5で「Kid A Mnesia: Exhibition」というゲームが発売された。実況動画を視聴していたけど面白そう、買いたい。こういう20年前の音楽の世界を拡張して、さらに世界観へ引き込まれるゲームで売り出すのは画期的である。先端テクノロジーや現代アートと親和性が高いRadioheadだとさらに期待感が倍増する。

PickUp.1「How To Disappear Completely」(2000)

親近感を感じさせるアコースティック音と、何処か遠い場所から聞こえてくる電子サウンドで構成されている。これが、まるで彼岸にいるような感じがする。4拍子と6拍子のポリリズムを奏でているからか楽曲から想像される厭世的な世界観もより深く表現されている。

PickUp.2「Optimistic」(2000)

楽曲の途中で「You can try the best you can」という歌詞が入っていたので、RADIOHEADの割に明るい歌詞だなと思っていたが、これは多分違う。「楽観主義」というポジティブなタイトルなのに、イントロの悲壮感溢れる進行。人を励ますというよりは、ニヒリズム的な諦めを諭す歌詞なんだと思う。楽観主義者とは「無意識に搾取されている危機感のない一般人」を指していて、被搾取者がどんなに頑張っても、社会の構造は変わらない、せいぜい頑張りたまえ的なニュアンスが込められている。

「OK Computer」以降、世界ツアーを回るようになった彼らが、世界各国の実情を目の当たりにし、格差社会の深刻さ改めて認識したらしい。皮肉たっぷりのネガティブな意味も込めて、彼らなりに被搾取者に対して危機感を誘発しているのかもしれない。