音楽と政治

日本でミュージシャンが政治思想を語ろうとすると、「無知のミュージシャンが政治を語ろうとするな」と言われる。僕は正直どちらでも良い。政治思想が自分と合わない主張だとしても、音楽として昇華してその曲がカッコ良ければ、それでも良いと思っている。その理由の一つとして、Rage Against the Machineという最高にクールな反体制派のバンドが挙げられる。

資本主義社会へ怒る者「Rage Against the Machine

Rage Against the Machine」とは資本主義やアメリカの金融システムに対する怒りを指す。ハードロックとヒップホップから影響を受けた力強いサウンドに、国家に対しての反体制的な歌詞。文化帝国主義を掲げようが、星条旗を燃やしてトランプFuckYou!!と叫ぼうが、このバンドを嫌う理由にはならない。

ただし、RATMの反権主義なところ”だけ”を真似た二番煎じ野郎は正直ダサい。RATMがかっこいいと感じるのは、きちんと反権主義バンドになるだけのバックボーンがあるからだ。活動家の母とアーティストの父から生まれた思想系アーティストの申し子・ヴォーカルZackと社会運動家の両親を持つハーバード大卒のギタリスト・Tom Morello を中心に結成された。重機やサイレンのサウンドを再現するなど独特な奏法を持つTom Morello「Spawn」にも参加していて、一発で「この曲の演奏者はTom Morelloだ」とわかった。僕が好きなThe Prodigyとのコラボも実現している。

Album「The Battle of Los Angeles」(1999)

Tom Morello という最強のギタリストがいるにも関わらず、負けず劣らずの存在感を示すベースとドラムの音が好きだ。殴りかかってくるような凄まじい音圧。今作は比較的、楽曲がキャッチーなんだけど、決して商業に媚びた感じではない。キレッキレのメッセージ性で鋭くなっていくZackのラップは、客と一体化していくライブの動画がおすすめ。

PickUp.1「Sleep Now In The Fire」(1999)

アメリカの覇権主義への批判を主張した楽曲。こちらの楽曲のMVでは映画監督の Michael Moore監督とタッグを組み、ニューヨーク証券取引所の前でゲリラ的に撮影をして逮捕されているのは有名な伝説である。ウッドストック1999で星条旗を逆さまに吊り上げて燃やす、みたいな過激な伝説を残したのもこの年。

個人的に好きなのは、真昼間ウォール街で働くサラリーマンが、システムの歯車の一部である自身の立場を忘れてRATMに熱狂する姿が心の奥底の本能を曝け出してるところである。普段言えないことをロックの力を借りてぶち撒けてしまおうぜ!という熱い気持ちが伝わってくる。

PickUp.2「Guerrilla Radio」(1999)

2000年代総合格闘技ブームを支えた格闘技イベント「PRIDE」のテーマ曲。RATMの中でNo1の知名度を誇るこの楽曲からRATMにハマりだした人も多く、私もその一人である。歌詞は後にアメリカ大統領となるGeorge W Bushのことを「麻薬王の息子」と叫んだり、歌詞に「ペンタゴンの暴力」「用済みのワシントンDC」と過激なフレーズを散りばめてはいる。しかしサウンドはイントロのギターリフとAメロのベースラインがストレートにカッコ良さを伝えており、初めて聴く人でもRATMの良さが伝わる楽曲である。